
顔面輪郭形成において本邦でもっとも希望の多い手術は顔面下1/3のフェイスラインを小さくする、いわゆる下顎角(エラ)形成手術である。 実際の手術は傷跡を考慮して口内法で行なうことが多い。我々は過去450例以上の下顎角形成術を経験しているが、全例口腔内アプローチで行なっている。その際、下顎骨の形態によっては術野の確保が難しく、骨切りの際に盲目的に行なわざるを得ないケースが多々ある。一般的に、かなりの経験を積んだ術者でも段差を残したり、左右差が出たり、骨切除量加減が難しく思ったような骨片を切除できない事が多い。その為、安定した結果を出すには非常に難易度の高い手術である。 今回我々は、可能な限り合併症を減らし、安全にかつ安定した満足すべき結果を出す為の工夫についてさまざまな観点から報告する。
下顎の輪郭形成術において歯槽神経は手術手技上、しばしば邪魔に感じられる。とは言うものの、神経損傷には細心の注意を払っているが、術後の神経麻痺を巡り、患者とトラブルになった事はほとんど経験がない。
これは、(A)術前のムンテラ1)の徹底1)程度の差はあれ、一時的な下口唇周囲の知覚異常が必ず生じ、これは将来きちっと回復する。しかし回復には意外 と時間がかかると云う説明)、(B)我々が経験する麻痺のほとんどがオトガイ孔外のオトガイ神経のレベルで生じ、鉤の牽引、圧迫による neurapraxiaないしは、axonotmesisである、の2点に集約されると思われる。
しかしながら、過去3年間の治療において、1)neurotmesis(神経幹の物理的断裂)9例、2)下顎骨外板削除による神経本幹露出24例、3)神 経周囲瘢痕による絞扼3例、などを経験している。そこで個々の麻痺における初期評価と回復の経過を正確に把握しようと、静的触覚検査(S-W知覚テス ト)・温冷覚検査を実施した。
1)期間:2000.6.1~2003.5.31の過去3年間
2)確実に追跡調査できた 2)318例 <2)完全回復まで確認できたか、術後1年間以降も通院評価できた症例>
1)損傷部位、及び損傷程度の検索
2)知覚検査の実施と評価(Highetの分類)
対象症例の70.8%にあたる222例は術直後の損傷レベルがHighet分類のStage2まであったが、それらに関しては特別な処置を施さなくても 6ヶ月までにほぼ99%が完全回復した。またneurotmesisを生じた全例とも、術中に損傷確認でき、適切な処置(神経縫合等)が行なわれた。これ らは直後Stage0(完全な感覚の脱失)であったが、3ヶ月後には、全症例がStage2までの回復(その後の回復経過は個々の症例により異なる)が確 認できた。